希望大国ブラジル(その24) プレステ買いにマイアミへ 「ブラジルコスト」という課題

希望大国ブラジル(その24) プレステ買いにマイアミへ 「ブラジルコスト」という課題

プレステ買いにマイアミへ 「ブラジルコスト」という課題

 ミッキーとミニーがショーウインドーで満面の笑みを浮かべる。その脇に「パラ・マイアミ(マイアミ行き)」の2語。ブラジル・サンパウロの巨大ショッピングセンターにある旅行代理店を訪ねると、米フロリダ州のディズニーワールドの写真に出迎えられた。

 女性店員のレナン・ウズエレさん(23)は「海外旅行の7割はフロリダ。ディズニーと安い買い物が人気の理由です」と話す。

 ブラジルは有数の高物価国だ。ソニーのゲーム機「プレイステーション3」は日本の約2万5000円、米国の249ドル(約2万円)に対し1999レアル(約10万円)。米国でたくさん買い物すれば、内外価格差で航空運賃が浮く計算になる。

 なぜ高いのか。輸入品には高関税がかけられ工業製品税や流通サービス税など最低6種が課税される。通貨レアルは9月以降、ギリシャに端を発する欧州危機のあおりで急落しているものの、近年のレアル高傾向も物価高に拍車をかけた。

 他にも州税や連邦税、社会負担金など税金や納付金は56種。世界銀行によるとブラジルは「税処理に最も時間のかかる国」で、企業は年間2600時間もの時間を税処理に費やすとされる。日本の355時間と比べるとその差が際立つ。

富裕層はヘリ通勤

 「ブラジルコスト」という言葉がある。ブラジル東京銀行元頭取の鈴木孝憲氏(75)は「複雑で重い税金や高金利、安定しない為替、道路や港湾などインフラ整備の遅れ、高い労働コストなどのことで、国内企業の競争力をそぎ、日本など海外企業の進出を難しくしている」と説明する。

 サンパウロは世界最悪の渋滞都市としても知られ、2009年6月には渋滞距離が市全体で293キロを記録した。代わりにヘリコプターが普及し、サンパウロ市のヘリ登録台数は452台と米ニューヨークを上回り世界一。新興オフィス街では夕方のラッシュ時、高層ビルの屋上から大企業の幹部を乗せたヘリが次々と飛び立つ。高速道路で渋滞に巻き込まれていた会社員、レオナルド・パホスさん(63)は「空は天国、地上は地獄さ」と肩をすくめた。ヘリの爆音も社会問題化している。

 アマゾンのマナウスでは昨年、港湾施設で300メートルにわたり地滑りが起きて大量のコンテナがアマゾン川へ流された。ソニー・マナウス工場の牛田肇工場長(53)は「うちの液晶テレビも流された。鉄道が発達していないためトラックで長距離輸送し山賊に襲われたこともある」と話す。

35年で年金受給

 東北部ペルナンブコ州の造船会社で溶接工として働くジェナリオ・ロシャさん(41)は月給1700レアル(約8万5000円)で妻(40)と3人の子供と生活している。

 「多くはないが生活費を引いた2割ほどは毎月貯金している。18歳から働いているので、あと12年で年金がもらえる」

 ブラジル労働法は労働者を「弱者」とみなし強い保護を規定している。1年働くと30日の連続有給休暇が与えられ、月給に加えて3分の1の休暇手当が出る。

 年金も、年齢でなく男性は35年、女性は30年、保険料を納めることで受給資格を得る。民間企業の場合、退職前の5年間で最も所得水準の高かった3年間を平均しその8割を、公務員は退職時の給与と同額を、生涯受給できる。手厚い社会保障は一方で企業活動と国の財政を圧迫する。

 ジェトロ(日本貿易振興機構)の二宮康史課長代理(36)は「ブラジルコストは経済成長に覆い隠されていたが、持続的な成長のためには速やかな解決が欠かせない」と指摘する。

-産経ニュースから-

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