希望大国ブラジル(その15) -「携帯でテレビ」南米で人気 広がる地デジ「日伯方 式」

希望大国ブラジル(その15) -「携帯でテレビ」南米で人気 広がる地デジ「日伯方 式」

「携帯でテレビ」南米で人気 広がる地デジ「日伯方式」

 小さな携帯電話に映し出されるテレビ映像は新たな日伯協力の証しだった。ブラジル・サンパウロの空港で会社員、アンナ・カロリーナさん(29)はサッカーのブラジル選手権をワンセグ機能で観戦していた。

 「これが日本の技術とは知らなかったわ。どこでも見られるのはうれしい。応援するチームの試合をやっていないのは残念だけど」

 わが国で7月24日に完全移行する地上デジタル放送には日米欧の主要3方式があり、日本方式のみが携帯電話など「移動体」でテレビが見られる技術を確立した。ブラジルは2006年に日本以外で初めて日本方式を採用した。07年に放送が始まり完全移行は16年。

 ブラジル電気通信庁のホベルト・マルチンス公衆サービス監督局長(55)は「携帯電話でテレビが見られるのは日本方式だけ。全国民が恩恵を受ける世界一のシステムだ」と話す。

 両国は日本方式を「日伯方式」として売り込み、南米を中心に12カ国へ広がっている。それは、日本国内だけで進化する「ガラパゴス携帯」に象徴されるように「世界標準」とかけ離れがちなわが国の技術にとって、歴史的な意味を持つ。

ドミノ式に採用

 06年5月。首都ブラジリアでは地デジ方式をめぐり日米欧の売り込み合戦が大詰めを迎えていた。国会での説明会には欧州企業の幹部らが受信機を持参しデモ実験を繰り広げた。日本側は、サンパウロ在住の電子部品販売会社社長、三好康敦さん(41)がたった一人で資料を手に説明した。日本政府も業界団体も予算をつけなかったため個人的に奔走していたのだ。

 三好さんは「日本の技術は当初から評価が高く、ブラジル側から『なぜ日本政府の担当者は来ないのか』と言われた。日本側で尽力したのは技術者ら個人の方々だった」と振り返る。

 結局、両国が日伯方式として共同で世界へ売り込むという約束で日本方式の採用が決まった。日本の総務省もようやく動きだした。

 総務省の元審議官、寺崎明さん(59)は2年間で南米を24回訪ね各国のトップへ働きかけた。面会の約束を破られ、欧州方式の採用を伝えるテレビニュースをホテルで見つめたこともあった。携帯電話でサッカーの中継を見せたらサッカー好きの大統領が“落ちた”こともあったという。

 09年にペルーが採用を決めると南米諸国はドミノ式に採用した。ウルグアイにいたっては一度は欧州方式に決めながら、近隣諸国の流れを受けて逆転した。

 寺崎さんは「ブラジルの協力により各国で首脳レベルと交渉できた」と話す。

「ともに成長する」

 日伯には造船や鉄鋼、不毛の地を穀倉地帯へ変えたセラード開発など官民協力50年の歴史がある。だが「イシカワジマ」が育てた人材は韓国資本の造船所で働き、セラードで収穫される大豆は中国へ輸出される。

 地デジでも、韓国や欧州企業が日伯方式に対応する薄型テレビやワンセグ携帯を生産しブラジル市場を席巻する。せっかく日伯方式が採用されてもセラード開発などと同様、いまのところ直接の「果実」はない。

 ブラジルは2014年にサッカーW杯、16年にリオ五輪を控える。ルセフ大統領の側近で地デジ普及に携わるアンドレ・バルボザ特別補佐官(59)は大統領府でこう語った。

 「W杯や五輪では世界の70億人へ向けて地デジ放送が配信される。われわれが築いてきた協力関係を他の分野へも生かしていきたい。これからは伯日がともに成長していく時代だ」

 日伯方式は大西洋を越え、2月にアンゴラが採用を表明した。さらに広がる勢いだ。

―産経ニュースからー

 
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