希望大国ブラジル(その13)-「国民の半分が空を飛ぶ」 世界の企業が「C層」に 標準

希望大国ブラジル(その13)-「国民の半分が空を飛ぶ」 世界の企業が「C層」に 標準

国民の半分が空を飛ぶ」 世界の企業「C層」に照準
 
 米国のカリスマ経営者が次なるターゲットに選んだのはブラジルの中間所得層「C層」(世帯月収15万~38万円)だった。2008年に設立された新興格安航空「アズール」。初めて飛行機に乗るC層に人気を博し、シェアを2年でゼロから7・4%へ伸ばした。
 
 週末の夕方、リオデジャネイロからサンパウロへ向かった。客室乗務員が「右下に見えますのがアイルトン・セナ通りです」とアナウンスを始め、満員の乗客は一斉に窓へ額を寄せる。
 
 飛行機はサンパウロでなく北西80キロの地方空港へ着陸した。ここで同社の無料バスが待っており、1時間でサンパウロへ。運賃は大手の半値の約300レアル(約1万5千円)程度だった。
 
 創業者のデビッド・ニールマン氏(51)は1998年、米国で「ジェットブルー」を設立した。大手が乗り入れず使用料の安い地方空港を拠点とし、インターネットで発券する手法で全米7位へ育て上げた。07年に失脚し、5歳まで育ったブラジルで「青」を意味するアズールを興した。
 
 同社のジアンフランコ・ベチン取締役(47)は「ある日、米国人の来客があり、ドアが開いたらデビッドがいた。彼の構想通りとなり、わが社の参入で飛行機を利用する人口が年間20%増えた。じきに国民の半分が空を飛ぶ」と話す。
 
新旧進出企業が活力
 
 ブラジルはポルトガルの植民地だった歴史的経緯や地理的な近さから欧米との結びつきが深い。国内売上高の上位500社のうち米企業が56社を占め、仏、英、独、伊…と続く。車やビールなど消費財が多い。
 
 独フォルクスワーゲンは53年から進出し売上高3位を誇る。一方でアズールは新興企業の代表格であり、新旧の進出企業が相まって経済へ活力を与えている。
 
 日本勢では、世界で販売台数1位のトヨタが40位で最高位。同社は58年に進出しながら、市場の7割を占める低価格の小型車が製品群になく、シェア8位にとどまる。10年に現地へ新工場を着工しインド市場へ投入した小型車と同じ車種を生産するが、稼働は12年後半で出遅れ感は否めない。
 
 トヨタブラジルの中西俊一社長(54)は「品質と顧客満足度の高さを訴えたい」と話す。サンパウロにあるディーラーでは壁に「カイゼン」とローマ字で書かれていた。受注から納車までを最適化するため、わが国製造業のおはこである改善活動を取り入れた。
 

住宅街で訪問調査

 「新興国とひと口に言っても実情は異なる。ブラジルはBRICSの中でも労賃が高く、労働者の権利も強い。中途半端な進出でははね返される」。企業コンサルタントの輿石信男さん(48)はこう指摘する。

 大手家電メーカー、ソニーブラジルのマーケティング統括、所鉄朗さん(45)らはC層のニーズを探るためサンパウロの住宅街で戸別訪問を続けている。

 「勝つためには負けている部分を徹底的に把握しなければならない」

 同社は72年に進出し、薄型テレビは数年前までトップだったが、高級路線がたたり4位へ転落した。所さんはカナダでサムスン電子に勝利した実績を買われ、首位奪還を使命に乗り込んだ。

 市場調査員から紹介されたC層宅で、利用する量販店やよく見る広告媒体、月々の支払額などを1時間以上かけて聴く。10年、薄型テレビを前年の3倍売り、シェアを3位まで戻した。

 深夜の住宅街。所さんはブラジルたばこ「フリー」を深く吸い込み、こう話した。

 「思い通りいかないこともあるが、やった分だけ結果がプラスにもマイナスにも返ってくる。そこがブラジルの面白いところです」

―産経ニュースからー

 

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