希望大国ブラジル(その12) -「金ヨナ式」で韓国企業が席巻

希望大国ブラジル(その12) -「金ヨナ式」で韓国企業が席巻

「金ヨナ式」で韓国企業が席巻
 
 ページをいくらめくっても「ヒュンダイ(現代自動車)」が顔を出す。ジェトロ(日本貿易振興機構)サンパウロセンターの原宏次長(48)はブラジルの一流紙誌に連日掲載される韓国最大の自動車メーカー、現代自動車の広告に目を通すのが日課となった。
 
 「最も多い日で1面から連続11ページ。毎日少しずつ改良が加えられ、読者は次第に現代自動車が一番格好いいと思うようになる」
 
 ブラジルの玄関口、サンパウロの国際空港では世界最大の電機メーカー、サムスン電子の巨大モニターが出迎え、高速道路沿いはサムスンとLG電子の看板が目立つ。両社は国内の薄型テレビ市場の5割を握る。
 
 現代自動車はイタリア人デザイナーを起用、中高級車に5年の長期保証をつけ、ブラジルへ進出した2005年に1523台だった販売台数を10年、10万6017台へ伸ばした。シェアは1958年に進出したトヨタを抜き7位に躍り出た。東北部の都市サルバドルにある現代自動車のディーラーで、販売員のファビオ・オリビエリさん(32)は「『5anos(5年)保証』という広告が支持を得ている」と話した。
 
「後発ゆえ命がけ」
 
 日本のお家芸であるはずの車と家電分野で、韓国企業がブラジルを席巻している。背景には自国市場が人口4977万人と狭く「輸出立国」を目指さざるを得ない事情がある。貿易依存度は10年、GDP(国内総生産)の87%に達し、日本の2割を大きく上回る。
 
 韓国のジェトロに相当する「コトラ(大韓貿易投資振興公社)」サンパウロ局の金斗寧局長(51)は「韓国企業は00年前後、日本が先進国市場に固執している間に、新興国へ優秀な社員を次々に送り込んだ。日本と比べ後発だったがゆえに命がけでリスクを取ってきた」と説明する。ブラジルの輸入相手国で韓国は10年に5位となり初めて日本を抜き去った。
 
 マーケティング戦略も徹底している。多摩大学の金美徳教授(48)=韓国経済=は「日本が『いいものを作れば売れる』と技術にこだわる一方、韓国は各国の好みに合わせた製品を開発した。バンクーバー五輪で3回転半ジャンプという技術にこだわった浅田真央選手に、カナダへ移住してまで現地化を貫いた金ヨナ選手が勝利したことと構図は同じだ」と指摘する。

中国は「6年保証」

 現代自動車の本社があるソウルへ飛んだ。

 米国人広報部長に案内された役員室で、米州担当の韓昌煥常務(50)は「ブラジルはグローバル戦略で最も重要な市場の一つだ。広告費は年間約2億ドル(約160億円)。後発組だからこそ、車を知ってもらい、愛してもらうため広告を徹底した」と話した。

 2月には6億ドル(約480億円)を投じサンパウロ州に初の自社工場を着工した。BRICSでインド、中国、ロシアに続き4カ国目となる。韓氏は「今後は中間所得層『C層』へ小型車を売り込む。相手はトヨタやホンダでなく上位3社の欧米勢だ。2年後に現在のシェア3%を10%へ伸ばすのが目標だ」と語った。

 韓国からブラジルへの進出企業は現代自動車とサムスン、LGを含め17社にとどまり、日本からの350社と比べても圧倒的に少ない。3月には中国の自動車メーカー「江淮汽車(JAC)」が参入し、「6anos(6年)保証」をうたう新聞広告を打ってきた。

 コトラの金氏は「背後に中国が迫っている。中国が本格的に上陸する前にビジネス手法が似ている韓日が組みブラジル市場へ向かうべきだ」と提案するが、そうした動きはほとんどない。

―産経ニュースからー

 

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