数年前にベレン―トメアスーの道路が出来バスが通うようになり、トメアスーの日系人にとっては大変便利になった。
それまでは舟で行かねばならず、時間がかかって仕方がなかったが、車だと日帰りも可能なのである。
ところで、バスが開通して間もなくのころ、トメアスーから来たバスが河の中に突っ込んで、多数の死傷者をだした事故があった。
夜だったが、河の手前で止まるところを、そのままスピードも落とさず河の中にダイビングしてしまったもの。
運転手の錯覚だが、実は停止の道路標識がなかった、というより、盗まれていたのである。
アマゾンの道路だってバスが通う道路にはちゃんと道路標識はあるのだが、これが実によく盗まれる。
なんでこんなもの盗むかというと、標識に使われているトタン板が目当てなので、カボクロはこのトタン板を実に器用に細工して、ナベとか洗面器を作ったり、カマドの上にのせて鉄板焼きの代用にしたりする。
マラジョー島やその周辺には、オランダ系の合板会社がアチコチに大きな土地を所有しているが、材料の材木の盗伐を防ぐ意味で会社所有地であることを示す看板が方々にたてられている。
これも最初はトタン板だったが、いくら掛け替えてもその都度盗まれる。とうとう業をもやして、お手のものの合板で看板を作ったら、やっと盗まれなくなった。
「いや、大したもんだぜ。トタンの看板で洗濯タライを作ったのを見つけたけどね。芸術品さ。道具もないのによくあんな立派なものを作るもんだ」合板会社のオランダ人技師はつくづく感心して筆者に話してくれた。
たしかに、カボクロには器用なのがいる。奥地の製材工場などで機械や発電機が故障すると、ちょっとした故障なら結構なんとか動かすように直す。かれらのいう「ケブラガーリョ」(間に合わせ)だ。
もちろん、基本がわかってやっているわけではないから、時にはトンでもないことをしでかすが、あり合わせのものを使って何とか間に合わせる技術、というか特技は、文明人よりはるかに身につけている。
字の読めない大工なども驚くべき仕事をやってのけることがある。
筆者はアマゾンの奥地で製材工場を建築している現場に行ったことがあるが、この工場の建屋は幅30メートル、長さ70メートルで、かなり規模の大きい工場だった。
むろん、すべて木材建築だが、驚いたことに、幅30メートルの間に一本の支柱もない、アーチ式建物を作っていた。これは極度に高度の技術を要する。
工場や倉庫は出来るだけ柱のないのが望ましいが、これはなかなかむずかしい。都市の近代工場は軽量鉄骨を用いるが、それだって30 メータのアーチを作るのだが、ピキアという、丈夫だがよくしなう木を厚さ2,5センチの板にし、それを7 トン、100 <span \'MS="" 明朝\',\'serif\'\"=""><サンパウロ新聞 アマゾン学のすすめ>から
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