変えられぬ食事の習慣

変えられぬ食事の習慣

 

カボクロの食事はお粗末で、インジオの食事よりははるかにおちる。

インジオには料理があるが、カボクロにはない。インジオの料理を真似ることはあるが、大体は料理とはいえぬものが多い。

人間の食べ物に対する好みは幼児期に決定されるから、永年単調な食物を食べ続けると、文明人の手の混んだ料理を食べさせても美味いとは感じない。

美味いと感じないどころか、時には全く食物として受け付けないことがある。

筆者のいた工場では労働者のために食堂をつくった。なにぶん僻地だから食料の仕入れが大変なので食堂の経営はある日系人の業者にまかせた。

ところが、食事をめぐって労働者の不平不満が絶えず、しょっちゅう、料理人とイザコザを起こしている。

食堂側の言い分は「これだけ毎日、材料を変え、料理方法を変えて作っているのに何が不満なんだ」ということである。

筆者も何回かためしてみたが、筆者にとってはあたり前の食事である。おそらくカボクロが自分の家に帰ったら、こんな上等な食事は食べられないにきまっている。

それでも文句が絶えない。或る晩、夜勤の労働者が夕飯をたべに食堂に入ったが、騒ぎはその直後に持ち上がった。

筆者のところに注進が入り、労働者が食堂で大暴れしているとのこと。

筆者はすぐに行ってみたが、アルミの食器がひっくり返り、食物が散乱してひどい有様である。労働者は口ぐちにわめき立って、食堂の従業員は自衛上、包丁を持って殺気立って身構えている。群衆心理でこんな時、扇動者がいると大乱闘になってしまう。

筆者は当番の現場監督を呼び、全員食堂からの退去を命じた。監督は筆者の命には従ったが、普段の温厚な性格にも似ず、彼自身怒っている。

全員が食堂を退去したところで、筆者は監督に騒ぎの理由を尋ねた。

すると、いつもは労働者のなだめ役に回るこの監督が「いくらなんでもあの食事はひどい。あれは人間の食事じゃなくてネコのヘドだ」と憤然としている。

「ネコのヘド?」意味がよくわからなかった筆者は一人で食堂に入り、日系人の料理人に騒動のもととなった食事を出させてみた。だされた「ネコのヘド」とは挽肉(ひきにく)と野菜のスープだった。

アマゾンのカボクロは挽肉を知らない。肉というのはすべて固まりであるというのが彼等の「常識」である。だから、挽肉と野菜のスープなど出されると「ネコのヘド」と怒りだすのである。

「カボクロの食事はね、カボクロのなじみのあるものでなけりゃダメなんだよ」と忠告してくれたのは、アマゾン40 <span \'MS="" 明朝\',\'serif\'\"=""><サンパウロ新聞 アマゾン学のすすめ>から

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