亀の霊魂抜き

亀の霊魂抜き

 

アマゾンでの食べ物といえば、「アマゾンの牛」と呼ばれる亀もピライクイ(Pira-魚、Cui-粉 という意味の魚の肉でソボロに似た食べ物)と並ぶ重要な蛋白源である。

亀は種類が多い。大きなタタルーガ・ベルダデイラをはじめ、カベスード、ピチユ、アペレマトラカジャ、ジャボチ、ムスアン、それに世界で最も醜悪な形をした亀のマタマタというような中々多彩である。

インジオは亀の名前をオス、メス、子供と分けてつけるからはなはだややこしい。

例えば、一番多く食用にされるタタルーガ・グランデは、オスがカピタリ、メスがジュララアスー、またはタニャンムク、子亀はアイアサという具合である。

亀の屠殺は残酷だが、興味深い。

ムスアンなどの亀は、煮え立った湯の中に生きたまま放り込むし、甲羅が一米にもなるタタルーガ・グランデは首をちょん切る。

場所によって殺し方も多少異なるが、タタルーガの殺し方はまず、甲羅の尾尻に近い部分を尖った刃物を廻して穴を開ける。

その穴に丈夫な綱を通して立木の太い枝に引っ掛けて逆吊りにする。怪力の亀も宙吊りにされTは抵抗のしようがない。四肢と首をバタバタするだけだ。

そこで一人が前に廻り尖ったS字形の鈎(ハンモックを吊る時に使う)を亀の口に近付ける。怒った亀が喰いつこうと口を開けた途端にS字の鈎を口の中に突っ込み、グイと引っ掛ける。

充分にひっかけたところで鈎を持った男が力一杯鈎を下に引っ張る。自然亀の首は下に伸びるが、その時、別な男が研ぎ澄ました山刀を首にあてがいゴシゴシと切って落す。

水道の蛇口をひねったように血が流れ落ちるが間髪をいれずに傍らに控えていた女が容器を突さ出して血を受ける。あとで血の料理であるサラパテをつくるためだ。

亀は爬虫類だから、落とされた首も10分や15分は息づいて筋肉が動いているし、首のない四肢もまだ宙を掻いている。

それから亀をおろすが今度は用意した長い竹ヒゴを首の切り口から脊髄に突っ込み、二、三回勢いよくしごく。

一瞬、亀に四肢はバタバタと大きく暴れるが、竹ヒゴをすっと引き抜き、ほそい紐のような神経がからまって出てくると、筋肉は弛緩し、もう動かなくなる。

これをやらないと、筋肉が硬直して肉が硬くなるからだ、インジオもカボクロもこの神経を亀の霊魂(アルマ)と考えており、霊魂をとり去らないで食べるのはタブーである。

だから神経抜きは一種の儀式であるのだ。

ワニを食べる場合も同様に神経(霊魂)を取り去るが、インジオの部族によってはワニを食べるのをタブーとしているところもある。

それが影響して、今でも主としてアマゾナス州の住民はワニを食べず、ワニを食べるパラー州の人間をパッパ・ジャカレー(ワニ喰い)といって軽蔑している。

 

<サンパウロ新聞 アマゾン学のすすめ>から

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