世界第3位の水力発電所 ベロモンテをめぐる動向

世界第3位の水力発電所 ベロモンテをめぐる動向

 

環境・再生可能天然資源院(IBAMA)は6月1日、パラー州に建設されるベロモンテ水力発電所(以下ベロモンテ)の設置許可を承知した。予定時期からは遅れたが、貯水ダムの工事がようやく開始となる。連邦政府の計画では、2015年2月に一部稼働、2019年に全体が完成する。

ベロモンテは、稼働までに国家環境審議会(CONAMA)が定めた三段階の環境許可を必要とする。最初の「事前許可(LP)」は、環境、立地、技術のフィージビリティを判断するもので、2010年2月1日に承認が下りたが、連邦検察庁(MPF)が検証不十分をその後も出張していた。今回承認されたのが第二段階の「設置許可(LI)」で、発電所建設のための機材設置や建設開始に対して出される。当初、2011年4月に承認予定であったが、MPFとのやり取りなどにより、4月13日に延期が発表されていた。最後は「操業許可(LO)」で、これをもってベロモンテの稼働が可能となる。

ベロモンテは、パラー州中央部に位置するアマゾン川の支流、シングー川上に建設され、完成すれば中国の三峡、ブラジルのイタイプーに次ぐ世界第3位の1万1,233メガワットの水力発電所となる。貯水ダムから取水し、90メートルの落差を使って発電をおこなう。タービンはフランシス型とカプラン型の使用が予定されている。

人口2,600万人規模の大都市圏の電力を賄うことが可能で、計画では最高30%がパラー州に、残りの電力は需要に応じて他州に供給される。さらに、パラー州や周辺自冶体は、連邦政府から年間1億7,480万(約1億1,000万ドル。1ドル=1.6レアルで換算、以下同様)の「発電のため水資源利用にかかる補償金(CRURH)」を受け取る予定など、地域経済活性化への期待も大きい。

ベロモンテの事業実施業者を決める入札は、当初2009年12月に予定されていたが、MPFによる内容の指摘等で延期となった。2010年4月に改めて実施された入札では、大手ゼネコンのケイロス・ガルバォン、発送電を行う北部電力公社(エレトロノルテ)などが参加するコンソーシアム、ノルテ・エネルジーアが販売電力価格77.97レアル(約49ドル)/MWh―落札のための上限価格は83レアル(約52ドル)/MWhであった―で落札した。パラー州でカラジャス鉱山などの大型事業を手がけるヴァーレも、5月に入り事業参加を決定した。

ベロモンテ建設の総投資額は、250億レアル(約156億ドル)とも言われており、ルーラ政権下で打ち出された成長加速プログラム(PAC)の中では、カンピーナス~リオデジャネイロ間の高速鉄道(340億レアル、約213億ドル)に次ぐ巨大事業である。現ルセーフ政権下では財政健全化が進められているが、最終的な資金調達では大きな問題はないとの見方が多い。政府が算出したベロモンテの雇用創出効果は1万8,000人、間接では2万3.000人となっている。

鉱山エネルギー省幹部が、「毎年5%の成長を達成するには、2019年までに計7万MWの発電所の設置が不可欠」(5月19日)とコメントしたこともあり、今回LI承認に胸をなで下ろした政府関係者も多いと思われるが、先住民の生活や環境に影響を与えるといった批判は依然多く、米州機構(OAS)も2011年4月、ブラジル政府に建設中止の要請を提出していた。6月1日のLI承認直後には、国内の300人を越える化学者が、ルセーフ大統領に事業停止を求める書簡を送っている。

さらに5月5日、 パラー州からの2州分離を問う州民投票の実施法案が連邦下院で採決された―現パラー州の西部半分を占めるタパジョスのほか、カラジャス鉱山や銅鉱山のある 南東部の「カラジャス州」が分離する計画。ベレンを含む北東部地域がパラー州として残る―。ベレンでは分離反対委員会が活動を始めたが、国会審議は既に終 了済で6カ月以内の州民投票実施は確定している。ベロモンテ周辺は「タパジョス州」に含まれ、建設計画に何らかの影響を与えることも否定できない。

 

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