外科手術をする際に行う全身麻酔や局部麻酔のもとになる麻酔薬の開発者は、研究室の化学者や薬学者ではなく、アマゾンのインジオである。 インジオが矢毒に用いた有名なクラレが外科麻酔薬の元祖なのである。 アマゾンには毒草は多いから、毒液を作ることはそう難しいことではない。しかし、折角毒液を塗った矢で獲物を倒しても、獲物を食べたら人間まで死ぬようでは困る。
アマゾンのゴム景気はなやかし時代、ゴムや労働者の運搬に活躍した船は「ガイオーラ」である。 この船は150トンから600トンぐらいの大きさで、マキをたいて蒸気を起こし、船尾に取り付けた大きな水車を廻して動かす。第二次世界大戦前迄はこの型の船がアマゾン航路の主力であった。 二階建てになっており下はマキと労働者、二階が船客用である。 労働者だって客のはずだが、当時、船側は労働者を船客とみなさなかったから平気で使役した。その代り、運賃もほとんどタダ同然だった。
アマゾンの生薬を知るにはベレンやマナウスの露天市に行くのが一番手っとりばやい。 20、30軒、店を並べて雑多なものを売っている。お義理にもきれいといえたものではないが、興味のあるものにとってはこんな面白いところはない。 筆者もベレンの露天市にはずいぶん通った。 どの店も色気の抜けたようなジイさん、バアさんがやっているが、何回も通っていると、そう大して数もない店だから顔なじみになる。
アマゾンの交通手段は舟である。道路がないから、車による交通は発達していない。 テコテコと呼ばれるエアー・タクシーはかなり発達しており、小さな飛行場が各地に作られているが、何と云っても飛行機は高くつくから、一般のカボクロが利用できるようなものではない。 舟にはいろんな種類がある。大は一万トン級の豪華船から小は一人のりのカヌー迄、千差万別。
最近ブラジルの新聞などでよく話題になるのだが、アマゾンにおける年少者の売春問題はかなり深刻である。 プロの売春婦ならどこでもあることだし、とりたてていうほどのことではないが、アマチュアの少女売春の蔓延は重大な社会問題で、関係者の頭を悩ましている。しかもだんだんプロとアマの区別がなくなっていく傾向にある。
ブラジルという国名の起こりが、赤色染料をとるパウ・ブラジル(ブラジルの木)から来ていることは良く知られている。 ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス等が争って海外の植民地を求めたのは、当時ヨーロッパでは貴重品の染料、香料、香辛料、生薬を獲得するのが目的でもあった。 パウ・ブラジルは、アマゾン河口から、マラニオン、セアラーの海岸地方の山地に生えていた木で、昔はかなりあってインジオが布の染色に用いていたが.
カボクロやインジオはハンモックで生まれ、ハンモックで死ぬ。ハンモックはインジオが発明した道具の中でのケッサクだ。 ブラジル語ではRedeで、網の意だが、これを日本式にレージと発音してもまず絶対に通用しない、ヘージまたはヘジといわないとわからない。 このハンモックは使い慣れると実に快適で、その上用途が広く、こんな便利なものはない。
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