希望大国ブラジル(その9)-世界企業がなぜ沖縄に? 製油所買収のペトロブラス

希望大国ブラジル(その9)-世界企業がなぜ沖縄に? 製油所買収のペトロブラス

世界企業がなぜ沖縄に? 製油所買収のペトロブラス

 沖縄県の小さな町にブラジルがあった。那覇市の東隣、西原町の海沿いにある製油所「南西石油」。2008年にブラジルの国営石油会社「ペトロブラス」が米エクソンモービル系の東燃ゼネラルから55億円で買収した。広大な製油所を訪ねると、黄と緑のブラジルカラーがあふれていた。

 南西石油は1972年操業。1日に最大10万バレル(1590万リットル)を生産する。珊瑚礁の海に年季の入った桟橋が延び、2隻のタンカーが停泊していた。

 社員160人のうちブラジル人は10人ほどで大半が日系人。広報責任者の日系2世、豊村ネルソンさん(46)がオレンジ色のつなぎ服姿で案内してくれた。ブラジルで超深海油田「プレサル」の生産基地を訪れた際、作業員が着ていたものと同じだ。「燃えにくい特殊素材を使っており本国から送ってもらう」という。

 環境安全課長の幸地伸さん(54)は沖縄で生まれ育ち、81年に入社した。「買収されるまでペトロブラスを知らなかったが、管理システムが近代的なことに驚いた。沖縄はブラジルへの移民が多く、どこか親近感がある」と話す。

メジャーと肩並べ

 ペトロブラスは深海油田の開発で石油生産量を2010年に日産216万バレルへ伸ばし、欧米の巨大石油資本「石油メジャー」と肩を並べた。同社の時価総額は10年、ブラジルの国内企業で1位、世界全体で6位。石油会社としては英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルや英BPを抜き去り3位に躍り出た。

 それほどの世界企業がなぜ沖縄なのか。

 ペトロブラス東京事務所長で南西石油社長の日系3世、川上オズワルドさん(56)は「アジア進出を狙っていて、製油所が必要だった。ペトロブラスが輸出を増やす上で重要拠点にしたいと考えた」と話す。

 ペトロブラスは06年にも日本で合弁会社「日伯エタノール」を設立し、サトウキビを原料とする燃料「バイオエタノール」を3%含むガソリンの販売を始めた。南西石油とともにブラジルからエタノールを輸入し首都圏へ出荷している。

 日系人の存在も大きい。ブラジルの日系社会で沖縄出身者は最も多い。豊村さんは「沖縄は日本で一番ブラジルに近い文化。南西石油を通じて日本との関係も強化する」という。

 東日本大震災を受け、南西石油は製油量を通常の日産約5万バレルから1・7倍に増やした。電力不足の打開に向けて、東京電力の火力発電所の燃料となる重油を供給するためだ。

視線の先に中国市場

 視線は中国にも向いている。中国の石油消費量はこの10年で倍増し、半分以上を輸入に頼っている。沖縄は上海までの距離が約850キロと東京までの約1570キロよりはるかに近く、地政学的な利点を持つ。川上さんは「沖縄は本土よりも中国に近い。石油消費の伸びている中国が魅力的なのは間違いない」と話す。

 ブラジルからの進出企業は01年、東京都内で在日ブラジル商工会議所を設立した。会員は現在90社に上り、日本の中には意外と多くのブラジルがある。

 世界最大の鉄鉱山会社「バーレ」もその一つだ。06年にカナダの資源会社「インコ」を買収し、同社が所有していた三重県松阪市のニッケル工場を傘下に収めた。そこは、わが国最大の年産6万トンを誇り、バーレのアジア拠点にも出荷している。

 ブラジルへの企業進出コンサルタント、輿石信男さん(48)は「ブラジル企業の目は中国へ向いている。日本進出は中国への足がかりとしての位置づけが多い」と指摘した。

―産経ニュースからー

カテゴリー: 

言語

Brasil

Japão

連絡先

www.samicultura.com.br

携帯: 55 92 98108-3535
E-メール: hisashi_umetsu1948@yahoo.co.jp
Go to top