希望大国ブラジル(その2)-超深海油田「プレサル」地の底に眠るフロンティア

希望大国ブラジル(その2)-超深海油田「プレサル」地の底に眠るフロンティア

超深海油田「プレサル」地の底に眠るフロンティア

 大西洋の海底からさらに5キロの地の底で、ブラジルが石油という「未来」をつかみ取った。リオデジャネイロから南南東へ約300キロ、「プレサル」と呼ばれる超深海油田。国営石油会社「ペトロブラス」が昨年10月、初の商業開発を始めた生産基地を日本のメディアとして初めて訪れた。

 ヘリで1時間14分。周り一面を海に囲まれた孤島の“要塞”があった。鉄格子が張りめぐらされ、煙突から炎が吹き出す。長さ330メートル、幅60メートルで4階構造と大型ショッピングモール並みの大きさ。オレンジや赤のつなぎ服を着た作業員120人が忙しく動き回る。

 左腕にブラジルの国旗をつけたエンジニアのジョン・ルーカスさん(24)は「世界でも未知の挑戦だから、毎日がエキサイティングだよ」と話す。

 プレサルは「塩より古い」を意味する。海底では岩や塩の層が約5千メートルまで位置し、その下にある石油を含む硬い泥の層がプレサルだ。南東部の沖合300キロに幅約200キロにわたって広がり、埋蔵量は少なくとも500億バレル(1バレル=約159リットル)とされる。

 ブラジルは30年以上前から海底油田を開発し2006年には石油の自給を達成した。プレサルを加えるとリビア、ナイジェリアを抜き世界8位の産油国となる。OPEC(石油輸出国機構)入りも視野に入る。

 基地の代表者、リベダビア・フレイタスさん(51)は「われわれは全く新しい技術で、プレサルに臨んでいる。ここは石油のフロンティアだ」と話した。

地震探査を応用「私には油層見える」

 ブラジルが深海の油田探索を本格化させたのは1970年代の石油危機が契機だった。ペトロブラス東京事務所の川上オズワルド所長(56)は「わが国の陸地には石油がないと60年代から分かっていた。どうしても海に行きたかった」と話す。

 海底の掘削技術は当初、100メートルが限界だった。メキシコやベネズエラも取り組んでいたが、80年代に石油価格が安定すると手を引いていった。ブラジルだけが、モーターやエンジンなど各国の先端技術を組み合わせることで、数千メートルの環境変化に耐えられる独自技術を開発した。

 プレサルで油田のありかを見つける技術では、地震を探査する「反射法」を応用した。圧縮空気を深海の岩塩層にぶつけて人工的に地震を起こし、跳ね返ってきた圧縮空気の波長からデータを解析して、油量を確認する。結果をもとに掘削したところ、2009年には87%の確率で油田が見つかった。

 同社石油探索部のセルソ・ムラカミ部長(50)は地震探査の波長データを手に「これを見ても他の人には分からないかもしれない。だが、私には油層が見えるのです」と説明した。

アフリカでも…根拠はプレート理論

 洋上の基地でペトロブラスのエンジニアは原油の抽出状況などを1日2交代制、12時間勤務で確認する。2週間を過ごし、陸地で3週間の休暇を取る。

 「夜中に問題が起きることもある。24時間緊張は解けない」。エンジニアのルーカスさんはそう言う。常に揺れを感じ、身体的な負担は軽くない。毎日メニューの変わる食堂やたばこ部屋、診療室も備わり、いずれジムもできるという。

 ペトロブラスはこの基地での生産を皮切りに、14年までに、同様の基地を43基整備するなど総額2240億ドル(19兆円)を投資する。かつての宗主国ポルトガルのGDP(国内総生産)に匹敵する額だ。

 08年からは、はるか大西洋を越え、アフリカのアンゴラとナイジェリアでも海底油田の開発を始めた。狙いはアフリカ西岸部での「第2のプレサル」だ。根拠は地球科学のプレート理論。1億6千万年前にゴンドワナと呼ばれる大陸が分裂し、南米とアフリカの両大陸になったとされる。

 「だからアフリカ西海岸にも同じような特徴の地質があり、当然プレサルも存在するのです」

 ゆっくりと揺れる巨大な基地で、代表者のフレイタスさんは自信たっぷりに語った。

―産経ニュースからー

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