アマゾン住民の主食はもちろんマンジョカである。何がなくとも最低マンジョカさえあれば食ってゆける。
ファリンニャ・デ・マンジョカに水を入れただけの「シヘー」は、とても食べ物とはいえるような代物ではないが、カボクロは他に何もなければこれで我慢する。
ただし、アマゾンのマンジョカは、ブラジル南部でいうマンジョカではない。
マンジョカにはスイート(ドーセ)とビター(アマルゴ)の二種類がある。スイートはそのままゆでても食べられるがビターの方は猛毒のシアン化合物(青酸)があって、そのまま食べれば必ず死んでしまう。
ブラジル南部でいうマンジョカは、無毒のアイピン種のことだが、アマゾンの有毒のアイピンはマカシェイラと呼んで、マンジョカとははっきり区別している。
アマゾンの農業は栽培技術が劣るから、大体何でも単位当たりの収穫量は南部に比べて落ちるのだが、マンジョカだけはアマゾンの方が面積当たりの収穫量が多い。
明らかにインジオの遺産だが、アマゾンのカボクロはどんなカボクロでもマンジョカの栽培は知っているし、この毒芋の毒抜き方法を知っている。
一口にマンジョカの毒抜きというが、これには大変な手間暇がかかる上、かなりの熟練を必要とする。
まず、芋をきれいに洗って皮をむき、ララードという洗濯板にトゲを植えたようなおろし板ですりおろす。それに水を加えてザルで濾し、粕と沈殿物に分ける。この沈殿物がタピオカで、ゴマ・デ・マンジョカのもとになる。
粕は椰子の葉柄を細かく裂いて編んだチピチという細長い籠にいれ、よく水洗いしてから籠を吊るして天日で干す。
このチピチはインジオの発明した一種のプレス機で、両端を引っ張ることによって伸縮自在だから、吊るしている間に長く伸びて、中の粕を締めつけ、粕の水分を絞り出す。
この時絞り出される液体が猛毒なのだが、上澄み液を加熱発酵させて毒を除くとツクピー原液となり、アマゾン料理になくてはならぬものとなる。
チピチで乾燥させた粕は、まだ大きな固まりがあるからこれをよくほぐし、土製のカマド(フォルノ)で炒りつける。
これがいわゆるファリニャ・デ・マンジョカで、アマゾン住民の主食である。
インジョンの開発したマンジョカの毒抜きと、毒抜きの過程で得られる副産物の完全利用は、今でもそのままカボクロに受け継がれている。
インジオ時代と変わったのは土製のカマドの代わりに大きな鉄鍋を使用するくらいである。
<サンパウロ新聞 アマゾン学のすすめ>から
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