暑くて変化のない気候

暑くて変化のない気候

リオやサンパウロからアマゾンに飛行機で行くと、ベレンやマナウスに着くのは大抵、夜中から明け方になる。

飛行機の時間表は大都市を中心に組んであるから、地方の都市はどうしても不便な時間となってしまうのだ。

ところで、エアコンの利いたか快適なジェット機からアマゾンの空港に降りると、一歩毎に舗装された地面から熱気というか、湿度を多く含んだ‘うん気‘がズボンの裾からモヤモヤと這いあがって、やがて全身を包む。

講内送迎バスのような気の利いたものはまだないから、空港建物までテクテク歩かされるが、そのうちジットリ汗が滲んでくる。

この感覚を経験した人は多いだろうが、私はアマゾンに住みはじめたころ、この湿った重い空気に触れた瞬間の感覚がイヤでたまらなかった。

「ヤレヤレ、これがアマゾンの空気か」と、うんざりした気持ちになってしまう。

ところが、何回もこの経験を繰り返しているとしまいには「これでアマゾンに戻ってきた」という、ホットしたような、懐かしい感じで、大きく息を吸い込んでみたりするようになるのだから、人間の感覚なんて良い加減なものらしい。

試しにベレンに永く住んでいる日本人に聞いてみたら、皆やはり飛行機から降り立って、あの重い空気に包まれると、「ああ、これでやっと自分の土地に帰ってきたな」と安心するそうである。

アマゾンは赤道直下だからむろん暑いに決まっているが、絶対最高気温は精々34度、それ以上になることはまずない。

暑さからいったら、38度にも達するリオやピヤウイ或いはマト・グロッソの方が暑いのだが、アマゾンの場合は年中同じように暑いのが特徴である。

年によって、いくらかのズレがあるのだが、アマゾンは9月迄が雨季で、7月迄が乾季となる。

雨季は雨が降るから乾季よりはしのぎやすいが温度差は2度しか違わないから、雨季でも依然として暑い。

もっともアマゾンは広いから、場所によっては例外もあるが、それは上流地方のアクレ州、ロンドニア直轄領およびアマゾナス州の一部で起こる「フリアージェン」と呼ばれる寒冷現象である。

これは7月ごろにかけて、急激に気温が低下する現象で、僅か1、2時間のうちに30度近く迄気温が低下してしまう。この寒さは数時間で終わることもあれば、数日続くこともある。

この間、住民は寒さにふるえて仕事にならないが、何日も続くと、あちこちで風邪がはやったり、河の魚が大量に死ぬなどの被害を与える。

フ リアジェンの原因は、つい先ごろまでは、アンデス山脈の寒風が吹き下ろすためと考えられていたが、最近になってこれは南極からアルゼンチン、パラグアイを 北上した寒冷前線が、ペルー領アンデスにさえぎられ、急に右廻りの大きな渦を描いてアマゾン盆地におりてくるものであることが、気象学者によって確認され た。

こういう例外もあるにはあるが、一般的にいえばアマゾンの気候は高温多湿で変化が少ない。

暑さと変化のなさが、人間の社会活動に与える影響については、いろいろ意見の分かれるところであるが、人間はその環境に応じて生活していかねばならないのだから、当然影響はある。

例えば、セスタ(ひるね)の習慣もそうだ。今どき、南部諸州ではひるねの習慣などないが、アマゾンやノルデステでは12時間乃至3 カ月や半年ならともかく、何年、何十年もそと土地で生活しようと思ったら、環境に適応した生き方をしないとダメなようである。

 

<サンパウロ新聞 アマゾン学のすすめ>から

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