霊薬マラプァーマ

霊薬マラプァーマ

霊薬マラプァーマ  


外科手術をする際に行う全身麻酔や局部麻酔のもとになる麻酔薬の開発者は、研究室の化学者や薬学者ではなく、アマゾンのインジオである。




インジオが矢毒に用いた有名なクラレが外科麻酔薬の元祖なのである。




アマゾンには毒草は多いから、毒液を作ることはそう難しいことではない。しかし、折角毒液を塗った矢で獲物を倒しても、獲物を食べたら人間まで死ぬようでは困る。




そこでインジオはさまざまな研究をし、量が少なければ一時的に神経中枢を麻痺させ、量を増やせば呼吸中枢まで冒して死に至らしめるクラレを開発した。これなら量を調整することによって、獲物を生獲りすることも出来るし、殺した獲物も食べられる。




クラレの原料は、呪術的要素もあってなかなかわからなかったが、今ではフジウツギ科とツヅラフジ科の毒草であることが証明されている。




麻酔薬には、ヨーロッパで用いられたロートコンや江戸時代、華岡青洲の用いたマンダラゲ(キチガイナスビ)なども有名だが、近代医学で用いられる麻酔はクラレ系統のもので、外科施術を受ける人はすべてアマゾンのインジオの恩恵をこうむっていることになる。




インジオの用いた生薬類は実に数が多い。むろん強精薬もある。




インジオの強精薬は地域によって用いる植物が違う。例えばアマゾン上流及びペルーではコカの葉、マット・グロッソ、ゴヤスではペキの実、ノルデステ地方ではカツアーバの樹皮、アマゾン中、下流ではマラプアーマという具合である。




いずれもそれぞれの歴史と伝統を持っているが中でもマラプアーマには面白い伝説がまつわっている。




アマゾンの語源が、女戦士アマゾナスから由来していることはだれでも知っているが。女だけのアマゾナス部族は、子供の欲しい時は部族と戦って男を捕虜とし、この男と交わって生まれたのが男なら殺し、女だけを育てて戦士にしていた。




ところが、部族に女が次第に増えるにつれて困ったことになって来た。捕まえた男の身体がもたないのである。




なにしろ僅か5、6人の捕虜の男に数千の餓狼のような女が襲いかかるのだからたまったものではない。いかに強壮な男でも三日ともたず、十日もたてばトリのガラのようになって死んでしまう。




種族保存が目的なのだから、目的を達しないうちに男がへたばったのでは困る。




アマゾナスの女王はすっかり考え込んでしまった。(なんとか男を永持ちさせる方法はないものだろうか)。




そこへあらわれたのが部族の女呪術師である。呪術師は女王に霊薬マラプアーマを使うことを伝授した。




よろこんだ女王は、早速部下に命じ、マラプアーマの根を探させ、呪術師の教えに従って霊薬を調合、これを捕虜の男に飲ませてみた。すると、ヘトヘトになっていた男がたちまち元気旺盛、男性自身も隆々としてなえることを知らず、あまたの女群を相手に無事おつとめを果たすことが出来た。




この木はアマゾン特産ボロボロノキ科の灌木で学名はPtychopetalum Umcinatumという。強壮強精薬というよりずばり催淫薬として用いられている。




有効成分はまだ単離されていないが、ヨヒンビン、レゼルピン、セルペンチン等のインドール系アルカロイドのあることはたしまで、その他にもいくつかの有効成分が含まれていると考えられている。




ブラジルの薬学書によると、催淫効果以外にも、血圧降下、運動機能失調、リウマチ、手足の麻痺、筋肉中枢の強化、神経疾患、胃腸衰弱、鎮静、催眠に効果があるとのこと。




こういう「霊薬」だから、製薬会社が放っておくわけはなく、ドイツのバイエルなどはこの木を輸入してヨヒンビンを抽出している。




このほか、アマゾンには多くの薬草があるが、そのほとんどが研究不足で、世に知られていないものが多い。


  




<サンパウロ新聞 アマゾン学のすすめ>から

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